2013年12月30日

【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで (おまけ)】

こんにちは。このラノ編集部のSです。

ひさびさの【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】です。

第3回
『このライトノベルがすごい!』大賞(以下、「このラノ大賞」)・応募作だった『ドラゴンチーズ・グラタン』第1巻第2巻を、“編集長の隠し玉”として選んだ経緯から、 改稿作業全般について紹介してきましたが
今回は、おまけ回の【新人賞応募・Q&A】です。

第5回『このライトノベルがすごい!』大賞締切直前でもあるので(2015年1月15日(水)当日消印有効!です)、
応募者の方々にも、なにかしらの参考になればと思います。




質問の多くは、英先生からのものをベースにしています。
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【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】も今回をもって終了となります。

ここまでお付き合いいただいた皆様へ、「なにかプレゼントになるものを」と考えて、このような一問一答を用意しました。

質問の内容は、私が新人賞へ投稿していた際、疑問に感じていたものや、いまでもちょっとわからないものなど、実用性の高いものを厳選したつもりです。
これが今後新人賞を目指す方々の力添えになれば、と思います。

もし質問の内容に有益なもの、探していた回答があったならうれしい限りです。それでそれで、もしよければ『ドラゴンチーズ・グラタン』を、特に第二巻を、お手にとっていただけるとこの英アタル、大喜びいたします。
英アタル
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応募書類などの疑問や基本的な質問については、大賞公式サイト内の、『このライトノベルがすごい!』大賞・よくある質問をご覧くださいませ。
ではでは、いってみましょう!
 
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◆Q.1◆
選考で重要視されるポイントとは?
また、選考段階別にチェックするポイントは異なっていたりしますか?

◇A.1◇
『このライトノベルがすごい!』大賞(以下『このラノ大賞』)には、一次選考・二次選考・三次選考・最終選考といった、4つの選考過程があります。(行程を正確に伝えると、一次選考前に一目で誤って応募されてきただろう小説ではない作品、旅行記やエッセイなどを除く作業があります)

どの選考過程でも重要視されるポイントはただ一つ。
「面白いか、面白くないか」です。

この回答では、納得度が低いと思います。応募者の方々は、面白い!と思って書き、受賞してやる!と応募しているのですから。なので、ざっくりとですが、『このラノ大賞』の評価基準を以下に。

『このラノ大賞』の選考では、基礎力(文章力、キャラクター造形・構成力・アイデア)などをベースに、完成度・新鮮さ・センスなどを加味してチェックしていきます。語弊があるかも知れませんが、選考に残っていくのは、自然、平均点の高い作品が多くなります。

そういう中に、(これまた語弊があるかも知れませんが)明らかに基礎力が不足しているのに、「キャラクター造形」「語り口の面白さ」「新鮮さ」を持った、“○○は破綻しているけれど、面白い!”“自分は苦手だけど、すごく好きな人がいるだろう”突出した魅力を持った作品、一点突破型の作品も混じって、選考を通過していきます。

そして迎える3次選考。
1本の原稿に対して、1~3次選考までの間に、数十人が目を通し、「面白いか、面白くないか」を評価した結果、審査します。

全く異なるベクトルを持つ、平均点の高い作品と一点突破型の作品では、正直もめます。そして、決断する際に重要な評価軸となるのは「面白いか、面白くないか」。

自分の作品が、「面白いか、面白くないか」を何人もの目でチェックされる。それが、新人賞へ応募するということです。

『このラノ大賞』では、一次選考通過以降の作品に評価シートをお送りしています。そこには各担当者が、読み飛ばすことなく、じっくりと作品を読み込んだ、生の感想とアドバイスが記入されています。時には、耳に痛すぎる言葉があるかも知れません。でも、それを吸収し地力にして、来年も応募して欲しいと思っています。
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◆Q.2◆
新人賞応募時、続編を匂わせる書き方はマイナスポイントなのか?
謎や設定はすべて回収しないといけないのか?

◇A.2◇
応募原稿は、その1本で1つの物語として完結していること、楽しめることが大前提です。

伏線を張りまくるのもOK、続編を匂わせるのもOK。
ただ読了後、納得度が低く、未消化感が残る物はNG。
(ここで具体的にOKとNGの例を挙げて説明するとわかりやすいのだと思いますが、ボーダーラインを明確にすることは、マニュアルの項目が一つ増えるだけのことで、応募者自身の地力UPにはつながらないかと)

応募原稿の中には、ストーリー内で提示された謎の解決が描かれず、「2巻へ続く」的に締めてある作品もあります。そういった「終わっていない物語」を、編集部では「まとめきれなかった」と判断します。(平行して考えるのは、意図的なものか? それとも単純な力不足なのか?という点ですが、どちらにしても好評価ではありません)

風呂敷を広げるのは意外と簡単で、
まとめる時は底力が必要です。

どうだ! と広げられた話を、どんな風にまとめあげるのか、ドキドキしながら読み進める読者の気持ちになって、書き上げた応募原稿を、今一度読み返してチェックしてみてください。
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◆Q.3◆
投稿作品にありがちなミスや、気を付けてほしいところは?

◇A.3◇
基本的なことですが、「プロフィールシートへの記載漏れ」と「応募原稿の誤字脱字」などですね。

プロフィールシートは、履歴書のようなもの。
それ自体が作品評価を左右するものではありませんが、記載漏れの激しい物は、情報を大切に扱っていないという印象を与えてしまいます。

特に記載漏れが多い項目を以下に。
●ペンネーム(使わない場合は「本名と同」と記入)
●連絡先:電話・FAX・e-mailアドレス
 (FAX、e-mailアドレスが無い場合は「持っていない」と記入)
●プロ経験の有無
 (有る場合は、出版された作品タイトルと出版社名を記入。無い場合には「なし」と記入)

応募原稿の誤字脱字、誤用、キャラクター名・用語の不統一は、表現力以前の部分、基礎力に「?」がついてしまう部分です。

また「梗概(作品のあらすじ)」は、物語全体を把握するために必要なもの。原稿のラストまできちんと書いてください。「そして主人公達は最後の決戦へ向かう……」的な終わらせ方はNGです。
(「梗概(作品のあらすじ)」は評価対象ではないため、「上手く書かねば!」と思わなくて良いですよ。物語の基礎部分、概要がきちんと書かれていればそれで必要十分です)
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◆Q.3◆
設定、キャラクター造形など、既存作品とかぶってしまった場合は、変更したほうがよいですか?

◇A.3◇
一概には言えませんが、新味があって、場所や時代などを含めた設定や世界観・キャラクター造形と配置・テーマ・展開・文体など、要素の多くがかぶっているのでなければ、基本的に変更する必要はないかと思います。(かぶりを推奨している訳ではありません。念のため)

ただ、正直なところを言えば「似てるな」とは思います。それはあくまで感想であって、評価ではありません。
「似ているけれど、こう描くのか!」「似ているけれど、すごく面白い」「まったく同じだった」「結局違う話になったけれど、面白くなかった」が評価です。前者は高評価、後者は低評価となります。

オリジナリティを重視するのであれば、既存作品とのかぶりに気づいたとき、原稿なりプロットなりを見直してみてください。

その作品を通して描き出したい物はなにか?
その要素はなくてはならないものなのか?
そのキャラ配置は必須か?
その展開でなくては、描き出せないのか?

再検討することで、原稿の無駄がそぎ落とされて、より面白いものに変わるチャンスになるかもしれません。
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◆Q.4◆
応募時に人気があるジャンルの作品を描くと、
入賞できる確立はあがる? あがらない?

◇A.4◇
ライトノベルの流行は、非常に早いスピードで移り変わっていきます。

流行に敏感ですか? 流れを読むことに自信がありますか?
アイデアから1作品を書き上げるスピードは、どのくらいですか?
あまり好きなジャンルではなかった場合、その作品の続刊を書き続けられる自信はありますか?

流行の先読みがある程度できて、どんなジャンルの作品も1~3ヶ月くらいで1本書き上げられるスピードを持っているなら、人気ジャンルで応募してみる価値はあります。

ただ、『このラノ大賞』の場合、締切から審査期間終了までが5ヶ月強。応募作品が出版されるのは、10ヶ月後。
執筆時からは、少なくとも1年近く経過しているはずです。
その時、同じジャンルが流行っているかどうかは神のみぞ知る、です。

なので、単純に今流行っているジャンルが審査で有利になる、ということはありません。流行に敏感な事はプラス評価ですが、それがQ1であげた要素より比重が高いわけではありません。
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◆Q.5◆
応募時、読みにくいペンネームをつけるのはマイナス要素ですか?

◇A.5◇
本名で応募される方もいらっしゃるので、
ペンネームの良し悪しは、全く問題なし。

審査は応募原稿の内容だけで判断します。
ですのでペンネームより、内容とマッチしていない、内容を適切に表していない作品名のほうがマイナスポイントになるかもしれません。逆をいえば、キャッチーでわかりやすいタイトルがつけられていると、プラスポイントになるかもしれません。(ただしその分、内容への期待度もあがるかも)

ただ作品名もペンネームも、デビュー時に変更可能なものなので、応募時はあまり気にしない方がよいですよ。
そこに時間を割くのであれば、内容の推敲を!
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◆Q.6◆
読み手を意識する上で大事なことはなんですか?
過激な暴力やセクシャルな内容などは控えたほうがいいですか?

◇A.6◇
大切なことは、読者がストレスなく、その物語を楽しめるように意識して書くことことでしょうか。

応募作品を書いた本人にとっては、十分に練り込まれ、説明しているつもりでも、読者にとっては、始めて読む物語。設定やキャラクター達を把握しながら読み進んでいくわけです。

その時、必要な情報を、適切なタイミングで、過不足なく、わかりやすく提示されていれば、読者は止まることなく、するりとストーリーに入り込めます。

例をあげて説明すると、応募原稿でよく見受けられるのが以下のようなケースです。
「誰がどのセリフを言っているのかわからない会話」
「性格や外見描写などの特徴付けが不足していて、頭に入ってこないキャラクターたち」
「説明が数十ページ前。忘れた頃に登場してくる設定や問題点」
「読み取れない伏線」
「誰が何処で何をしているのかわからないバトル」
「難読文字や装飾過剰で、何を伝えようとしているのかわからない文章」

こういった事が多い原稿は、どうしてもそのシーンで目が止まってしまいます。読者は現実に戻って、「何が書かれているのだろう?」と悩んでしまう。なかには悩まず、そのシーンを丸ごと飛ばし読みしたり、そのまま続きを読まない読者もいると思います。

ストーリーや設定を書き込むのに夢中で、キャラクター描写がおざなりになっている作品もあります。セリフ内の口調だけで、補足がなくても誰のセリフかわかるように、表情・仕草の描写だけでキャラクターの感情がわかるように、意識して書くことを心がけましょう。

あと個人的に気になるのは、代名詞・接続詞の多用。固有名詞や冗長さを避けてのことだと思いますが、わかりにくくなってしまうケースも多いですね。

過激な暴力やセクシャルな内容は、描写の仕方次第でしょうか。
直接的にじっくり書くのとサラリと流すのとでは、前者のほうがハードルは高くなりますが、どちらの書き方をするにしても、それが物語の骨子に関わる部分であり必須ならば、NGではありません。でも、10代をメインターゲットとするライトノベルでは、あまりニーズがなく、相性がよいとは言い難いジャンルです。突出した魅力と面白さを持っていないと、最終選考までたどりつくのは厳しいですね。
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◆Q.7◆
大賞に選ばれるのは、どのような作品ですか?
またどのような部分が決め手になりますか?

◇A.7◇
大賞受賞作を決めるのは、最終選考委員の方々なので、【過去の受賞作と講評】 をご一読いただいたほうが、
わかりやすいかと思います。

個人的な意見としては、3次選考を通過する作品は「完成度(平均点)が高い作品」か「一つ突出した所がある作品」で、大賞受賞作は上記2点に加え「新鮮さ」と「広がり(世界観でもジャンルでも)」を兼ね備えた作品が選ばれることが多いように思います。
(ちなみに、第1回『ランジーン×コード』・第2回『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』・第3回『ロゥド・オブ・デュラハン』・第4回『セクステット』……硬軟硬軟と続いたのは偶然ですw)
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【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】おまけ回、【新人賞応募・Q&A】はいかがでしたでしょうか?

もっと聞きたい&知りたい&確認したい点などがありましたら、
大賞問い合わせフォームや、twitterのこのラノ編集部(@konorano_jp)あてにご連絡いただけると幸いです。『このライトノベルがすごい!』大賞・よくある質問はこちら


第5回『このライトノベルがすごい!』大賞の締切は、
2015年1月15日(水)! 当日消印有効です!

編集部一同、
皆さんの熱い一作をお待ちしております!!!


《おしまい》 


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