2013年09月08日
【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで (6)】
こんちには。
このラノ文庫のSです。
一日(二日?)遅れですが、【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】第6回です。
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞(以下、「このラノ大賞」)・応募作だった『ドラゴンチーズ・グラタン』(第1巻/第2巻)を、“編集長の隠し玉”として刊行するにあたり、大規模な改稿を行ったこと、そしてその具体的な内容について、これまで説明させていただきました。
第6回では、より基本的で細かい部分かつ重要な点について話していきたいと思います。
細かくて、重要な部分。
それはキャラクターの立て方や世界観の設定などではなく、誤字脱字、表現の誤用といった基礎的な文章力の部分です。
ちょっと『ドラゴンチーズ・グラタン』(以下『ドラチー』)から話はそれてしまいますが……応募作品の審査では、作品そのものの面白さと同時に、応募者の基礎文章力もチェックしています。誤字脱字があまりに多かったり、語彙・表現力が不足していたりする応募作品は時期尚早・実力不足として、マイナスポイントがカウントされます。
(「話が面白ければ、それでいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それも正解。ただデビューしてから苦労するのは、あなたです。大量のダメ出し、赤字を処理していくのはダメージがくる作業ですよ)
誤字は、間違った文字。脱字は、文字の抜け。
これらは大きくわけて、入力ミスによっておこるものと、誤って覚えている場合の2種類がありますが、入力ミスによるものであれば、それほど深刻ではありません。
書き上げた原稿を、落ち着いてチェックすれば意外と簡単に見つかります。
脱字している部分を修正すれば、問題解消です。
(あまりに多い場合は、また別の問題ですが)
問題は誤って覚えていた場合。
この場合は、「間違っていることがわからない」ため、自分では修正できないのが最大の問題。これは基礎力を上げてください、としか言いようがない部分ではありますが、間違いに気づくため/修正するためにできることはいくつかあります。
第三者に原稿をチェックしてもらう、もしくはソフトの「校正・校閲」機能を活用してみる、「あれ?」と思ったら辞書を引くこと、などです。
上記のチェックで見つけ出しにくい部分としては、発音は同じだが、意味が異なり区別される同音語・同音異字・同音異義語(「いがい」:以外・意外/「きく」:聞く・訊く・聴く)。異なる漢字だが同じ発音(訓)が可能な同訓異字(「かげ」:陰・影・蔭/「あと」:後・痕・跡・蹟……)などがあります。
漢字は表意文字(文字の形が意味を持つ/意味を表す、文字のこと。英語などの表音文字は基本的に、字形に意味を持たない)ですので、どの漢字を使用するかによって、意味が違ってきます。ほぼ同じ意味を持つ漢字を使っているのであれば応募時はスルーされることも多いですが、厳密に、意図的に、漢字が取捨選択されていることが原稿からわかる場合、それはプラスポイントとなります。
ちなみに漢字だけでなく、作品の世界観とキャラクター、シーンにあった適切な語句の選択ができているか、それが中高校生に理解できる表現であるか、などもチェックされます。適切な語句でわかりやすく表現されていれば、同じ文字数でもシーンの情報量は高くなり、表現の引き出しが多ければ、同じようなシーンでも新鮮に描けますし、作品全体の雰囲気・方向性を描き出すことも可能です。
例えば、地の文に難読漢字や熟語を多用するラブコメは、テンポや軽み、取っつきづらさの面で正直、厳しい(そこに意図と目的があり、成功しているのであればOKですが)。逆に時代物で現代用語が頻発すると、取っつきやすくはなりますが、時代設定のチョイスや作者の意識に疑問が生じ、結果的に物語に入り込みづらくなるパターンもあります。
さて『ドラチー』です。
これまで改稿作業の様子を、物語の構成面を中心に説明していましが、上記のような一文単位の文章力についてはどうだったのか?
基礎的な力量に関しては問題なし。
誤字脱字、誤用もなく、表記統一もほぼ完璧でした。
※「表記統一」「表記のゆれ」とは、「一つ・ひとつ・1つ」など、
この作品ではどの表記を使うかバラけさせないこと。
これは自分の記憶に頼るのではなく、
メモや「表記の統一表」を作ることをオススメします。
特にキャラによって表記の書き分けを行う場合は、
あったほうが楽です。
(統一できていないと、それはあくまで
書き分けている「つもり」でしかありません)
この作品ではどの表記を使うかバラけさせないこと。
これは自分の記憶に頼るのではなく、
メモや「表記の統一表」を作ることをオススメします。
特にキャラによって表記の書き分けを行う場合は、
あったほうが楽です。
(統一できていないと、それはあくまで
書き分けている「つもり」でしかありません)
ただ設定・構成面で課題とされていた「過剰さ」は、文章面でも同様。一文単位で文章が練り込まれすぎてクドくなり、格好いいがわかりづらい。固有名詞の頻発を避けるため、代名詞を使いすぎて、またわかりづらい……そのため、構成面の修正と同時に、文章単位の修正も行われていきました。
具体的には、『ドラチー』の日常パート(食事と医療の部分)ではできるだけ修飾を抑え、日常的な言葉・言い回しに変え、バトルシーンではわかりやすさとスピード感を重視した表現を残す、という方向性での修正です。
過剰、過剰と何度も書いていますが、過剰さ=NGというわけではありません。問題はそのシーンの状況、キャラの心情が、読者に伝わらないこと。小説が第三者に向けたエンターテイメントである以上、伝わらない=NGなのです。
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ドラゴンチーズ・グラタン
竜のレシピと風環の王
著者:英 アタル
出版:宝島社
(2013-02-09)
ドラゴンチーズ・グラタン2
幻のレシピと救済の歌姫
著者:英 アタル
出版:宝島社
(2013-07-10)
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