2013年08月31日

【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで (5)】

こんちには。
このラノ文庫のSです。

 【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】第5回です。前回に続き改稿作業についてお話したいと思います。

 『このライトノベルがすごい!』大賞(以下、「このラノ大賞」)・応募作だった『ドラゴンチーズ・グラタン』第1巻第2巻を、“編集長の隠し玉”として発売するにあたって、クリアしなければいけない大きな課題は以下の3つ。

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 ●1●「独特で過剰な設定」を、初見の読者にもすんなりと
    理解できるよう、わかりやすく情報提示」すること

 ●2●作品の半分近くを占める戦闘シーンをタイトにし、
    全体の「バランス」を取りつつ、メリハリをつける

 ●3●物語のテーマ「食療学」=「料理で病気を治療する学問」を、   きちんと物語にリンクさせること
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 その内の「1」については、前回お送りした通り、物語の構成を変更し、情報提示を小出しに、かつ物語と有機的に絡ませることで解消しましたが、次にクリアすべき「2」。戦闘シーンの処理がなかなかの難問でした。
 なぜなら、英先生が小説を、ライトノベルを書き始めたきっかけ、モチベーションが「かっこいい戦闘シーンを書きたい!」というものだったからです。

 商業出版物といっても、小説は作家さんの作品です。
 しかし、要望をそのまま受け入れることがベストであるとは限りません。

 応募原稿のうち、戦闘シーンが占める割合は全体の半分~3分の1強。渾身を込めた力作であることは、原稿からも伝わってきました。

 が、この長大な戦闘シーンが中盤からラストにかけて挟まっているため、本作のメインテーマ【食事で医療を行う】が置き去りにされ、主人公レミオが何のために戦っているかが曖昧になってしまっていたのです。
 「いくら渾身のパートであっても、作品のバランスを崩し、面白さを失速させているのであれば、必要なし」。厳しいようですが、そう判断し、戦闘シーンを現状の半分にすることを英先生に提案しました。同時に、キャラがブレてたアトラの性格設定の調整、「ドラゴンチーズ・グラタン」という料理をより有機的に作品と関連させる見せ方など、大きな修正から細部に至るまで数限りない相談と調整が続きました。

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ドラゴンチーズ・グラタンを読んでいただいた方々から、
『料理のシーンが美味しそうに書けている』『キャラ同士のやり取りが良い』というお言葉をいただきます。
大変うれしいのですが、複雑な気持ちがそこに同居しています。

多くの方に勘違いされているような気がしているんですが、
戦闘シーンこそ私が書きたい部分、注力していきたい部分です。
……あんまり上手くはないんですけれど。

逆に料理のシーンや、感情表現にはあまりこだわっていません。
もちろん面白くなるよう、全力は尽くしています。
ですが、戦闘シーンほど悩んでいないのも事実でして。

力を入れた部分と、評価される部分の反転現象にいつも眉根を寄せております。

さて、ドラゴンチーズ・グラタンの初期原稿ですが
実質、半分近くを戦闘シーンが埋めていました。
これを削り落とす、という作業はなかなかに大変でした。
初期原稿にたっぷり書き込まれた修正指示の赤文字を見たときは、目まいがしました。
修正指示の中には戦闘シーンへ深く組み込まれている設定の削除なども含まれており、
かなり困惑したことが記憶に残っております。

ともかく手をつけなければ、どうにもなりません。
膨大な修正指示に向き合った私は、なんというか……こう、貧弱な装備で魔王討伐に送り出される
RPGの主人公の心持ちが少しだけわかったような気がしました。

そうやって、削っては作り直し、を繰り返して完成した原稿。
初期原稿とのもっとも大きな差は『読みやすさ』でした。

初期原稿には、自分のやりたいこと、面白いと思ったこと『だけ』が存分に詰め込まれていました。

自分のやりたいことを書き込むのは、決して悪いことではありません。
しかしその結果、読み手への配慮を欠いた不親切な文章になっていました。
たとえるなら非常に脂っこい肉料理だけになっていました、ご飯もサラダもありません。

読み手がちゃんと状況を把握できる文章か?
読み手がすんなりイメージができる書き方か?
読み手がストレスを感じない言葉を選んでいるか?

初期原稿の戦闘シーンには、こういった部分が欠けていました、決定的に。
やりたいことを文面に叩き込もうとするあまり、
『誰が読んでも理解できること』という文章の大前提が欠落していたんですね。
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 修正され、私の元に届いたのは、見事に戦闘シーンが切り詰められた、そして戦闘の合間に、街での日常がカットバックのように挿入されている原稿でした。
 このシーン挿入は英先生のアイデアで、これが入ることによって、作品のテーマとレミオの目的がブレることなくストーリーラインに絡み、クライマックスを盛り上げる効果も発揮していました。
 それを読んだ瞬間、こちらの意図が明確に伝わり昇華された喜びと、これは面白い原稿になる!と嬉しい手応えを感じました。この瞬間がある意味、編集の醍醐味でもあります。

 そして修正作業は佳境を迎えます。




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