2010年09月23日

コトモノ入門 第3回

「このラノ」編集部のSです。

一昨日から続けてきた「コトモノ入門」もいよいよ最終回。
今日は実際に、コトモノがストーリーにどんなふうにかかわっているのかを
お伝えしたいと思います。

 

主人公・武藤吾朗(通称ロゴ)は高校生。
物語は彼が、全国で起こっている連続詞族襲撃事件に巻き込まれるところから始まります。
さまざまな成り行きによって、事件現場に居合わせることになったロゴ。
そこで詞族を襲っていたのは、かつての幼なじみ・真木成美だった。
ロゴは事件を止められるのか? 成美の目的とは何か?
……といったあたりが、物語の見どころといえるでしょう。


ロゴもまた、コトモノのひとり。
もっとも彼は、コトモノとしてはちょっと特殊です。
コトモノは通常、本人の認識ごと変化してしまいますが(これを「同一型」という)、
ロゴの場合、左手にロゴとは異なる別の意識が宿っており、
その意識こそがコトモノとなっています(このようなタイプを「分離型」といいます)。
コトモノの名は〈ダリ〉。
コトモノと顔を合わせたとき、そのコトモノのイメージを独自の解釈で絵にし、
自動的に描くコトモノ。
ダリを持つロゴは、その能力ゆえに多くのコトモノにかかわってきました。
コトモノにまつわる悲劇と喜劇を目の当たりにし続けてきたロゴは、
いつしかコトモノである自分には選択肢はなく、
ただただ状況に流されていくしかない……と考えるようになります。
そんなロゴが、事件を通してどう変わっていくのか。
以前も書きましたが、それを描くのが『ランジーン×コード』という物語でもあります。


連続詞族襲撃事件の犯人たる成美もまた、分離型のコトモノを持っています。
彼女が持つのは、コトモノを喰うコトモノ〈ゼムト〉。
ゼムトは喰ったコトモノの性質を自分のものとする力を持っています。
人より聴覚が発達したコトモノを喰えば、遠くの音まで聞こえるようになるし、
脚力を発達させたコトモノを喰えば、人より速いスピードで走ることもできます。
さらにゼムトは、それらの能力を自在に切り替え、操ることができます。
対するロゴは、コトモノのイメージを絵に起こすことしかできません。
戦えばまず勝ち目のない相手と、ロゴがどう対峙していくのか、
ぜひ注目して欲しいと思います。


そしてロゴと共に事件に巻き込まれる、謎の少女・名瀬由沙美
彼女は普通、本人以外には話せないはずの遺言詞をなぜか唱えることができ、
成美もまた、執拗に彼女を狙います。
開始当初は謎に包まれている彼女の正体が鍵となって、
物語はどんどんと加速していきます。
彼女もまたコトモノですが、その性質がどんなものであるかは、
物語の根幹にかかわるため、ここでは明かせません。
ただ、昨日、一昨日と説明してきた、コトモノという存在の持つ性質を
根底から揺るがすものである……とだけ書いておきます。
そして物語のクライマックスでは、その性質が最大限に発揮された結果、
かつてないバトルシーンが展開することになります。
それがどんなものなのか、ぜひ自分の目で確かめてみてください。


ロゴや成美、由沙美以外にも、作中には多数のキャラクターが登場します。
ポイントは、それぞれが異なる考えのもと、コトモノにかかわっているということ。
コトモノによる事件を防止、解決するために奔走する刑事・福地治夫
遺言詞産業のトップ企業の社員であり、コトモノを利用する立場にある不破太一
産業利用されるコトモノの現状を憂う科学者・宇津木律子
そして、弱いコトモノたちを保護し、共に暮らしている女性・アカネ
いずれも異なる立場・思惑の大人たちがさまざまに考えをめぐらせ、物語の裏で暗躍します。
それぞれの考えがぶつかり合い、物語を動かしていく緊迫感にも要注目です。


設定、ストーリー、キャラクター、それぞれに見どころのある
『ランジーン×コード』という作品ですが、
それの世界観を絵という形で支えてくれた方のことも忘れてはいけません。
コトモノという人ならざる存在が多数登場し、
ともすればイメージしづらい部分もある本作の世界観ですが、
イラストレーターのしばの番茶さんは、それを見事に形にしてくれました。
その力量は、本を手に取り、ぱらぱらとめくるだけでも十分に伝わるはず。
世界の広がりを感じさせる、精緻なイラストに魅せられたなら、
ぜひ本文にも目を向けていただきたいと思います。

 

さて、3日間にわたってお送りしてきた『ランジーン×コード』の紹介、
いかがだったでしょうか。
担当なりにこの作品の魅力が少しでも伝わるべく言葉を尽くしてきたつもりですが、
それを知ってもらうには、何より読んでもらうのが一番なのもまた事実。
この3日間語り続けてきた中に、少しでも心に響くものがあり、
それが本を手に取るきっかけになれば、これに勝る喜びはありません。

 

栄えある第1回『このライトノベルがすごい!』大賞・大賞受賞作『ランジーン×コード』。
どうぞよろしくお願いします。

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