2010年09月22日
コトモノ入門 第2回
「このラノ」編集部のSです。
昨日に引き続き、本日の更新は「コトモノ入門(第2回)」です。
昨日は前置きが長かったので、今日はさくっと始めますよー。
さてさて。
コトモノというのが、「『遺言詞(いげんし)』によって、世界に対する認識が変わったヒト」
だというのは、昨日説明したとおりです。
認識が変わるのは、遺言詞を聞くことで、その人の脳が変質するためです。
脳の変質は、単に世界に対する認識を変えるだけでなく、
変化した認識に合わせて、その人の身体感覚さえも変化させます。
たとえば昨日例に挙げた、自分を透明人間だと思っているコトモノの場合、
他人の視線を敏感に察知し、その死角から死角へと動くことで、
「自分は透明人間である」という、彼にとっての現実を壊さないようにしています。
遺言詞による脳の変質は、それを可能にするだけの身体の変化をも、
そのコトモノに与えているのです。
とはいえ変化させられるのは、あくまで本人の身体まで。
自分の周囲の環境まで変化させられるわけではありません。
昨日はほかに、天と地が逆転していると感じているコトモノを例に出しましたが、
彼らの場合、彼らがどんなに「天と地が逆転している」と思っていても、
現実に重力が逆転するわけではありません。
そこで彼らは、ワイヤーで天井から身体を吊り、天地逆転した生活を送ることで、
彼らの生きる現実と、本来の現実とのギャップを埋めているのです。
このように、コトモノたちは多かれ少なかれ、
自分たちの現実と、本来の現実とを擦りあわせながら生きているわけですが、
上に挙げた天地逆転生活を送っているようなコトモノの場合、
なかなかひとりではそんな生活はできません。
そこで多くのコトモノたちは、同じ種類のコトモノ同士で寄り集まり、
コミュニティを作って生活しています。
このコミュニティのことを『詞族(しぞく)』と呼びます。
詞族を作るには、同じ種類のコトモノがある程度の数集まっていなければいけません。
では、同じコトモノを増やすにはどうすればいいか。
コトモノではない人間に、遺言詞を聞かせればいいのです。
コトモノたちは、種類ごとにそれぞれ固有の遺言詞を持っており、
コトモノであれば、例外なく自分の持つ遺言詞を唱えることができます。
素質など、さまざまな条件が重なった人間が遺言詞を聞くと、
詠唱者と同様に脳が変質し、同じコトモノへと変わります。
このようにして、コトモノはその数を増やしていくのです。
(もっとも辺り構わず遺言詞を口にすると、
その場の人間が片っ端からコトモノ化してしまう恐れがあるため、
人前で遺言詞を唱えることは、法律で厳しく禁止されています)
遺言詞とは、その字面・発音からわかるように「言葉の遺伝子」と呼べるものです。
言葉の遺伝子によって増殖する、ヒトとは異なる生命。それがコトモノなのです。
さて。
少しさかのぼりますが、コトモノの中には、脳が変質した結果、
身体能力や感覚さえも変わってしまう者がいる、と説明しました。
その中には、人間にとって有益なものをもたらしてくれる者もいます。
たとえば作中には、風の動きを感知し、それをコントロールすることで
会話をするコトモノが登場します。
彼らの能力を応用すれば、天気をコントロールすることもできるようになるかもしれない――
そう考える人がいてもおかしくないですよね。
作中では、このように社会に利益をもたらす可能性のあるコトモノを
産業利用する企業が登場します。
また、コトモノの性質を利用した産業は「遺言詞産業」と呼ばれ、
社会を支える重要なものになっています。
けれど、コトモノとは本来、人間とは異なる現実に生きる別の生命。
それを人間の都合で、自分たちの利益のために利用することが、果たして正しいことなのか。
また、コトモノの中には、利益どころか、人間に害を与える可能性のある者もいます。
人間の側でも、コトモノを「ビョーキ」と見なし、
ことさらに遠ざけようとする考えが根強く残っています。
詞族を作れない少数派のコトモノは、生きていくのが精一杯なケースもままあり、
彼らをどの程度保護してやるべきかという問題もあります。
コトモノのいる世界と、それによって起こるさまざまな問題。
それに主人公たちがどう立ち向かっていくかが、物語のテーマのひとつでもあり、
2巻以降も多かれ少なかれ描かれていくことになるでしょう。
「なんかややこしそうだなー」と思ったそこのあなた。
心配しなくても大丈夫。
たしかにいろいろとヤヤコシイテーマも扱っていますが、
ストーリーの基本はエンターテイメント。
上で書いてきたような問題は、物語を追いかけていくうちに、
登場人物たちが向き合う問題でもあります。
彼らの活躍を見ながら、その視点を通して、読者の皆さんも
物語の裏にあるテーマに自然と向き合える、という寸法です。
では、そうしたテーマを裏に隠し持った、
『ランジーン×コード』とはどんな物語なのか? そしてその魅力とは?
それについては、明日改めて語りたいと思います。
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