2010年09月21日

コトモノ入門 第1回

ご無沙汰してます。「このラノ」編集部のSです。

「このラノ文庫」創刊から10日。すでに刊行作品を読んでくださった方も多いと思います。
この10日間、発売に授賞式とイベントが目白押しでてんやわんやしていましたが、
編集部もようやくそろそろ落ち着いてきたかなという感じです。
ブログの更新もTさんにまかせっきりでしたが、本日から私も復帰することになりました。
このラノ大賞&文庫はまだまだ始まったばかり。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

さて、刊行直前には各担当から作品の見どころを紹介してきましたが、
本日はいよいよ真打、大賞受賞作『ランジーン×コード』の魅力を、
担当の私Sがたっぷりとお伝えしたいと思います。


……え? 「もう読んだし、今更そんなもの語られても」?

……ふふふ。

その回答は予測済みだッッッッッ!!!!!

というわけで、本編読了済みの方でも楽しんでいただけるよう、
ない知恵絞って考え付いたのが今回の更新内容。
題して「第1回 コトモノ入門」です。


『ランジーン×コード』最大の特徴にして魅力、それが「コトモノ」という概念。
ヒトであってヒトでない、この不可思議な存在が生まれたこそ、
『ランジーン×コード』という物語が生まれたといっても過言ではありません。
いわばこの作品の核となる概念なのですが、その独特の設定が、
「理解しづらい」という声をいただいているのもまた事実。
しかしそれで本を閉じてしまうのはもったいない! というのは、
読み終えた方々にはきっと同意していただけるはず。
そこでこの場を借りて、「コトモノとは何か?」について、
なるたけわかりやすく解説してみたいと思います。

 

コトモノとは、ひと言で言えば、

「ある『言葉』によって、世界のとらえ方が変わってしまったヒト」

のことです。
ここでいう「ある『言葉』」というのは、ちょっとした暗号のようなものだと思ってください。
普通の人には理解できない、特殊な意味や発音を持つ『言葉』。
その言葉を聞いた人は、脳が変質してしまい、普通の人と同じようには
世界を認識できなくなってしまいます。
そうなってしまった人こそが「コトモノ」と呼ばれる存在であり、
人をコトモノに変える『言葉』のことを、『遺言詞(いげんし)』と言います。
(必ずしも『遺言詞』を聞いたすべての人がコトモノになるわけではありません。
また、人以外の生き物も、『遺言詞』によってコトモノとなる可能性があります)


さて、「世界のとらえ方が変わる」とはどういうことか?
たとえば私たちは、リンゴを見ておおむね「赤い」と思います。
そのように感じるのは、脳がそう認識しているからだ――
というのは多くの方がご存知かと思いますが、
逆にいえば、その脳の感じ方が変わってしまえば――
たとえば赤いものを「青い」と感じるようになってしまえば、
その人はリンゴを見て「青い」と思うようになります。
そしてその人にとっては、「リンゴ=青」というのが真実になるのです。

コトモノというのは、さまざまな出来事に対して、
上記のような「認識の変化」が起こっている人々のことです。
その人をコトモノへと変えた『遺言詞』の種類によって、
認識の変わり方も異なってきます。

○地面が空で、空が地面だと感じる(天地が逆転する)
○自分が透明人間であると思い込む
○風の音が会話に聞こえる

上記は作中に登場するコトモノたちの、「変化した認識」の一例です。
コトモノたちにとっては、上に挙げたような捉え方こそが真実であり、
彼らはそのことに対して疑問を感じません。
あるコトモノにとっては、天と地が逆さまになっていることのほうが自然であり、
またあるコトモノにとっては、自分が他人の目に見えないことは当たり前のことなのです。
我々にとって、土のある場所こそが地面だということや、
他人に自分の姿が見えていることが、当たり前であるように。


突き詰めれば、コトモノとは普通の人間とは違う現実に生きている存在なのです。
そんなコトモノたちと人間とは、本来なら共に暮らしていけないはずですが、
あるときを境にコトモノが急増したことによって、否応なく共存せざるを得なくなっていきます。
ヒトとコトモノ、異なる現実に生きるふたつの生命は、互いにどう向き合っていくのか。
そして主人公・武藤吾朗は、そんな両者とどんなふうにかかわっていくのか。
それが『ランジーン×コード』のテーマのひとつでもあります。

 

長くなったので本日はここまで。続きはまた明日。

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