2013年07月26日

2013年07月26日

【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで (1)】

こんちには。
このラノ文庫のSです。

 さて、【“編集長の隠し玉”『ドラゴンチーズ・グラタン』ができるまで】第1回です。


 “編集長の隠し玉”として刊行された『ドラゴンチーズ・グラタン』第1巻第2巻)。
  初回は、この作品がなぜ“隠し玉”として選ばれたのかそしてなぜ受賞作品にはなり得なかったのか、について『ドラゴンチーズ・グラタン』の担当編集として語っていきたいと思います。

 まずは“隠し玉”について。
 『このライトノベルがすごい!』大賞(以下、「このラノ大賞」)の先輩にあたる賞に、『このミステリーがすごい!』大賞(以下、「このミス大賞」)があります。
 「このラノ大賞」の“隠し玉”は、「このミス大賞」の“隠し玉”と同じ位置づけとなっています。
 (ちなみに、「このミス大賞」の“隠し玉”は、以下のようなラインナップです。第8回(2009年)/高橋由太『もののけ本所深川事件帖オサキ江戸へ』、七尾与史『死亡フラグが立ちました』。第10回(2011年)/岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』など)

 第3回まで「このラノ大賞」に、“隠し玉”は存在しませんでした。
 が、2012年春、第3回を迎えた「このラノ大賞」の3次選考会議上。激論の上、決定した3次通過作品と、3次通過には難有りだが、魅力的な作品数作。
 難有り作品の一作が、『ドラゴンチーズ グラタン~ヴィーディル食堂のレシピ~』(以下、『ドラチー』)でした。

 3次選考会時のコメントを一部引用してみます。
「熱さがある作品。ぐいぐいと引き込んでいく力がある」
「主人公をはじめ、料理店の人々などすべてのキャラが立っている。料理を軸としたストーリー展開が王道ながら魅力的」
「設定と料理を1つのテーマに持ってきた新しさ。独特の世界観を描き出している」

 『ドラチー』には、新人作家さんに求めるもの(少なくとも私個人が基準とするもの)=発想力とオリジナリティ、魅力的なキャラクター、が備わっていました。なにより、読者を物語に引きずり込む力を持っている作品でした。
 ただ、上記コメントには、以下のエクスキューズもついていました。

「設定があまりにも過剰」
「独自の固有名詞が多く、情報提示の処理に難があるため、世界観が見えにくく、状況がわかりにくい。料理の話で始まったはずなのに後半は竜との戦いがメインになっており、両者の関連性が薄い、バトルシーンが冗長であるなど、構成に難がある」
「バランスの悪さが問題。調整可能か」
「この世界独特の現象について基本理解ができていないと読み進めていっても、何が起こっているかをつかむのが難しい。基礎的な知識、発想力が高いことは分かるが、その提示の仕方、密度などがうまくないので、このあたりを上手にコントロールできればリーダビリティーがあがってより、おもしろくなるのでは」

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「このラノ大賞」の一次選考・二次選考の評価コメントは、大賞サイトで公開されています。
 ただ、ここで公開されている評価コメントは、<良い点>のみ。
 1次選考通過者~3次選考通過者に送付される「評価シート」には、<改善点>も記載されています。

 『ドラチー』の<良い点>は、大賞サイトでチェック(1次選考2次選考3次選考)していただくことにして、ここでは<改善点>の一部を。
「分量バランスが悪い。クライマックスにむかって収斂していくよう、書き込み過ぎの箇所を削るべき。また、伏線についても、工夫が欲しい。
 また、今後の課題として、文章面の指摘をしたい。勢いがあるし、漢字の多用も雰囲気をかもし出しているが、読みずらい箇所多くもったいない。作品の持つ勢いを殺さない修正は、さじ加減が難しいとは思う。しかし、良い作品が持つ「空気感」を描ける力があるので、ぜひ挑戦して欲しい」

 ここまで並べればおわかりかと思いますが、『ドラチー』は、非常に面白いのに、非常にバランスが悪く、改善点も多く、それが改稿で修正できるかどうかが、判断しずらい作品だったのです。

 英先生は、第2回「このラノ大賞」にも、『魔甲炎機 ファルセゴ』(1次選考2次選考3次選考)という作品で、3次選考まで進み、ここで落選しています。
 その時の評価も、『ドラチー』とほぼ同じ傾向でした。
「面白いのに、バランスが悪い」

……この応募者の問題点は改善可能なのか?
……改稿するとしても、それが可能なのか?

 完成度の面から見て、『ドラチー』は三次選考を通過ならず。
 しかし、
 「料理」+「医療」&「バトル」という、新鮮さ。
 「ヴェルキア器官」をはじめとする独自の設定と構築力。
 「レミオ」「アトラ」「バレロン」といったキャラクターの魅力。
 それらを形にしないままにしておくのは、もったいない。
 とりあえず、応募者に連絡を取ってみよう。
 賞受賞でなくても、デビューする気持ちはあるか?
 この作品を改稿する余地はあるか?
 応募者の意志を、まず確認してみよう。

 では、誰が?
 このラノ文庫の担当は、基本的に「その作品を、著者を担当したい」と思った編集者の挙手制です。
 (『ドラチー』と同じく“隠し玉”として刊行された、藤八先生の『星とハチミツの存在証明(テスタメント)』応募時タイトル「星とハチミツの存在証明」も同)
 迷わず手を挙げたのですが、自分が担当に決まったときの感想を正直に言うと、「あぁ、すごく苦労するな」でした。
 そうして、昨年のこの時期。
 英先生にメールを送りました。
 「出版の確約はできないが、一度お会いしたい」と。

 そう、この時はまだ“隠し玉”としての刊行は決まっていなかったのです。




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